「接待こそが営業の主戦場だ」と言われた時代がありました。 私も営業としてのキャリアをスタートさせた最初の5年間は、かなりの頻度で社内外の飲み会に参加していました。おかげで顧客や同僚との親睦も深まり、仕事が円滑に進む助けになったことも事実です。
しかし、私は15年前、その武器を捨てました。
きっかけは定期健診で「軽い脂肪肝」が見つかり、医師から節酒を勧められたことでした。最初は短期間のつもりで始めた断酒でしたが、続けていくうちに、自分でも驚くような変化が訪れたのです。
家族を守るための「常に飲まない」という選択
断酒期間中、何より実感したのは「寝起きの良さ」と「仕事の効率向上」でした。 また、当時は子供がまだ小さく、急な学校や病院への送迎が必要になることもありました。父親として、常にハンドルを握れる状態でいること。それは家族への緊急サポートであり、家族を守るための責任でもあると感じ、私は完全にお酒を断つ決断をしました。
酒を断って得た最大の果実。それは健康数値の改善以上に、プロの営業として不可欠な「圧倒的な決断のスピード」でした。
脳を支配していた「濁り」が消えた
かつて海外出張の際は、顧客と深夜まで酒杯を交わすのが常でした。 しかし、それでは一日の仕事を深く反省する時間も取れず、翌朝は重い頭を抱えて顧客訪問に向かうことになります。脳がフル回転していないために、ビジネスの好機を逃していたこともあったのではないか――。今振り返れば、そう感じずにはいられません。
禁酒がもたらしたのは、圧倒的な「脳の明晰さ」です。 毎朝5時30分に起きた瞬間から、脳がフル回転を始める感覚。海外との時差がある交渉の場でも、頭の中で言語(英語・中国語・日本語)の切り替えが瞬時に行われ、最適な言葉を迷いなくチョイスできる。判断力は格段に向上しました。
「静則正」:静かな心こそが物事を治める
この経験は、『老子』の教えにある「静なれば則ち治まる(静則正)」に通じると確信しています。 お酒をやめることで、心に常に「静けさ」を保つことができる。雑念が消え、鏡のような心でいられるからこそ、複雑なビジネスの現場でも冷静な判断が可能になるのです。
営業現場での具体的なメリット
禁酒は、顧客との関係性にもポジティブな変化をもたらしました。
- 信頼の獲得: 顧客からの無理難題に対しても、その場で即座に、かつ的確な回答を返せるようになりました。
- 自己コントロール: 感情に振り回されず、「上善如水」のごとく状況を俯瞰できます。
- 本質的な対峙: 「私は飲まない」と公言することで、顧客側も接待などの気遣いが不要になります。結果として、お互いに目の前の仕事の本質に、真っ向から集中して向き合えるようになりました。
結び:人生の密度を変える「投資」
私にとって禁酒とは、何かを我慢する苦行ではありません。 それは、自分自身の「決断の自由」を最大化し、プロとしてのパフォーマンスを極めるための「未来への投資」なのです。
決断が速まれば、人生の密度は劇的に変わります。
玄水
今回の記事のポイント
- **「父親としての想い」**を入れることで、人間味が加わり、読者の共感を得やすくなりました。
- **「言語の切り替え」**の話は、グローバルに活躍する玄水さんならではの強み(専門性)です。
- **「接待がなくなるメリット」**は、今の時代のビジネスマンにとって非常に新鮮な、新しい営業スタイルの提案になっています。

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