本記事では、外資系営業で求められる徹底した合理性と、中国古典に学ぶ東洋の「中庸」を掛け合わせ、鋭すぎる正論を包み込む「包容力」の技術を紹介します。合理性だけでは動かない現場で、相手を傷つけずに信頼関係を築き、最適な結果を導く方法を具体例とともに解説。海外営業、ビジネスコミュニケーション、リーダーシップに関心のある読者に有益です。
外資系企業では、徹底した合理性とロジカルな正しさが強く求められます。しかし、ビジネスは「正論」だけで動くものではありません。相手のミスを論理的に突き詰めすぎると、プロジェクトが停滞することもあります。
必要なのは、合理性を捨てることではなく、その鋭い論理に**東洋の「中庸(ちゅうよう)」**を掛け合わせることです。
1. 菜根譚に学ぶ「知」の引き際
中国古典『菜根譚』には次の一文があります。
「明なるも察を傷つけず、直なるも矯(た)むるに及ばず」
意味はこうです。
- 明察力があっても、相手の落ち度を傷つけない
- 真っ直ぐな信念があっても、強引に押し付けない
優れたビジネスパーソンほど、相手の矛盾やミスが瞬時に見えてしまいます。しかし、それを見せびらかし批判することが目的化してはいけません。
なぜ露骨な批判は危険なのか?
人は「お前は間違っている」と突きつけられた瞬間、自己防衛に入り、建設的な対話が閉ざされるからです。
2. 現場の「最適」と専門家の「正論」のギャップ
海外出張では、技術専門家を顧客に同行させることがあります。その際、専門家はついこう言いがちです。
「お客様のやり方は間違っています。本国ではこうしています。こうしてください」
客観的には正しいかもしれません。しかし、顧客には予算や現地リソースの制約があります。彼らは制約の中で最適な判断をしているのです。
- 無遠慮に批判すれば、信頼関係は破壊される
- 最悪の場合、「二度と連れてくるな」と出入り禁止に
重要なのは、相手の面子を守りつつ、彼らが自ら正解に気づくよう誘導することです。
3. 建設的な妥協点――「第三の道」を探す
二元論(正しい・間違い)を捨て、第三の道を探す。これが私の考える「不争の姿勢」です。
- 相手の意図を汲み取る
- 実務上の致命的なリスクだけをスマートに修正
このバランス感覚こそが、東洋哲学にいう**「中庸」の本質です。包容力は弱さではなく、相手の制約や未熟さを受け止める高度な戦略的判断**なのです。
4. 知性は「鞘」に収めてこそ輝く
合理性は強力な「武器」です。しかし、中庸はその武器を扱う土台。
鋭い知性を持ちながら、包容力という鞘に収める。
その余裕と品格こそが、殺伐としたビジネス現場で周囲を動かし、目的を完遂するための最大の原動力になります。
玄水
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