外資系RSUの確定申告体験談|令和5年・6年の実録:e-Taxで消耗しないための実務手順

外資系企業に身を置くと、避けて通れないのがRSU(譲渡制限付株式ユニット)の確定申告です。 会社は権利を付与してくれますが、納税の手続きまでは肩代わりしてくれません。

私は2023年(令和5年)、2024年(令和6年)と2年連続で、付与されたRSUを売却し、日本で税務申告を行いました。 RSUとは、一定期間の継続勤務を条件に自社株を無償交付される仕組みですが、その「出口」である税務処理には、特有の構造的ストレスが伴います。

本稿では、私が実際に行った手続きを「消耗しないための実務」として記録します。

目次

RSU課税の基本構造:給与所得と譲渡所得の2段階

RSUの確定申告において、最も重要なのは「2回課税される」という事実を理解することです。

  1. 株式確定時(Vest):権利が確定した時点の時価相当額が「給与所得」として課税されます。外資系の場合、ここが源泉徴収されないため、自ら申告が必要です。
  2. 売却時(Sale):Vest時から売却時までの値上がり益が「譲渡所得」として課税されます。

この2段階の納税は手間がかかりますが、放置すれば税務署からの指摘を招きます。戦略的な対処が必要です。

指定信託銀行への正確な登録:海外との情報の同期

RSUが付与される際、まず会社指定の海外信託銀行(E-TRADEやFidelity等)に個人情報を登録することになります。

ここで重要なのは、住所や日本の納税所管税務署、送金先の銀行情報を「正確に」提出することです。海外の信託銀行は、付与される者の所在国と納税国を厳格に管理しています。 場合によっては納税証明書などの客観的書類を求められますが、これは「二重課税」を防ぎ、適正なプロセスを踏むための必須条件です。後から修正する労力を考えれば、初期登録に時間をかけるのが最も効率的です。

戦略的選択:Vestと同日の市場売却による管理の簡素化

私は納税計算の煩雑さを回避するため、「株式が確定(Vest)した日に即市場売却する」という手法を信託銀行に依頼しました。

この最大のメリットは、「Vest時の所得額」と「売却時の譲渡所得額」がほぼ同額になることです。 計算が極めて明快になり、管理の手間が劇的に減ります。もしその株を保有し続けたいのであれば、一度売却して得たキャッシュで改めて市場から買い直せば、取得価格と売却価格が明確な通常の「特定口座」などの取引と同様の管理(あるいは一般口座での管理)になり、後の計算が容易になります。 ただし、評価額が大きい場合は売買コスト(手数料)が膨らむため、資産規模に応じた慎重な判断は必要です。

専門家を味方につける:税務署と税理士の活用

納税区分や具体的なe-Taxへの入力方法に迷った際、一人で悩むのは時間の無駄です。

私は所管の税務署に直接相談に行きました。そこから東京地方税理士会の税理士さんを紹介してもらい、無料で指導を受けることができました。 プロの指導の下で作成された申告書は、自分一人で試行錯誤したものより遥かに高い信頼性を持ちます。精神的な平穏を保つために、公的なサポート窓口を使い倒すことは「静かな生存戦略」の基本です。

海外送金の出口戦略:BIC/SWIFTコード対応銀行の選択

売却した資金を日本で受け取る際、私は「日本円(JPY)」に両替して送金してもらう設定にしています。納税額を日本円で確定させるためです。

このとき、国際取引に強い大手銀行(私は三井住友銀行を利用しています)を指定することが肝要です。 重要なのは、銀行が発行する「外国送金到着のご案内(兼外国関係計算書)」です。送金が到着するたびに郵送されてくるこの書類は、確定申告時の客観的な証憑(エビデンス)となります。 BICコード(SWIFTコード)を正しく設定し、資金の流れを透明化しておくことが、スムーズな着金と確実な申告を支えます。

まとめ:手続きを一つずつ潰すという規律

RSUの確定申告は、分解すれば一つ一つの手続きは決して難解ではありません。

  1. 海外信託銀行への正確な情報提供
  2. 売却タイミングの戦略的決定
  3. 税理士等への確認による正確な区分
  4. 国際送金に適した銀行での受け取り

これらを淡々と、規律を持ってこなす。 面倒な手続きを後回しにせず、仕組み化しておくこと。それが、外資系という環境で消耗戦を強いられないための、実務者としての知恵です。


玄水


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