約半年ぶりにベトナムを訪れている。今回の滞在先は、南部のバリア=ブンタウ省だ。海辺のホテルに身を置き、沈みゆく夕日を眺めながら、この国の驚くべき変貌のスピードに思いを巡らせている。
今回の出張で、私が最も強く感じたのは、ベトナムがいま歴史的な転換点に立っているという事実だ。
1976年以来、最大規模の行政改革
ベトナム政府は2025年7月1日、従来の63省・市体制を再編し、34省・市へと統合する大規模な行政改革を断行した。
これは1976年の南北統一以来、最大規模の制度変更である。
目的は極めて明快だ。
- 行政運営の効率化と重複コストの削減
- 煩雑な行政手続きの簡素化
- 広域インフラ整備の加速
省を跨ぐ調整コストを引き下げ、国家としての意思決定スピードを高める。不透明な世界情勢が続く中で、ベトナムは**「内側から国家構造を書き換える」**という、極めて攻めの姿勢を選択した。
動き出す巨大インフラと、ビジネスの予兆
今日、ホーチミン空港からブンタウへと向かう車中で、私は車窓の風景に圧倒された。至る所で、大規模な道路建設や土地造成が同時進行している。
おそらく、まずは経済の中心地である旧ホーチミン市周辺との接続を徹底的に強化し、物流のボトルネックを解消する狙いだろう。
大規模インフラが動き出せば、必然的に需要が生まれる。
セメント、鉄鋼、エネルギー、そして高度な施工管理技術。
行政の枠組みが変わり、インフラが整備される。
それは私たちビジネスパーソンにとって、新たな市場が立ち上がる瞬間でもある。
「構想し、即座に行動する」という凄み
もちろん、この巨大な実験の結末は、まだ誰にも分からない。
行政の肥大化を防げるのか。
地元の生活者がこの急激な変化をどう受け止めているのか。
改革の成果が数字として現れるまでには、相応の時間もかかるだろう。
それでも私が感心し、同時に一種の危機感を覚えるのは、彼らが
**「構想し、即座に行動に移している」**という点だ。
世界が不安定だからと足踏みするのではない。
不安定だからこそ、国家のOSを書き換え、未来への布石を打つ。
そのリーダーシップと実行力は、停滞する多くの先進国にとって、そして私たち個人のビジネスキャリアにとっても、学ぶべき姿勢ではないだろうか。
海風が心地よいブンタウの夜。
刻一刻と姿を変えるこの国の景色は、変化を恐れず動く者だけが、次の時代の主導権を握るのだと、静かに語りかけてくる。
玄水
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