現代の目まぐるしく変化するビジネス環境において、新規事業の開拓や個人のキャリアの発展に不可欠なものは何でしょうか。
それは、MBAで習うような洗練された戦略でも、完璧な事業計画書でもありません。もっと泥臭く、もっと原始的な**「試行錯誤(Trial and Error)」**です。
もともと心理学の学習研究から生まれ、製造業の開発現場などで使われてきたこの概念。しかし、正解がなく、明日の経済情勢すら不確定な世界を生きる今の私たちにとって、試行錯誤は単なるビジネスの手法ではなく、人生の**「生存戦略」**そのものなのです。
1. 「致命傷にならないコスト」で、今すぐ打席に立つ
私の考える大人の「試行錯誤」とは、非常にシンプルなルールのゲームです。
もし、あなたの中に「これはいけそうだ」「やってみたい」というアイデアが浮かんだなら、そのために必要な投入コスト(時間やお金)が**「今の自分が負担できる範囲内(致命傷にならない範囲)」**である限り、迷わずすぐに行動に移すべきです。
当然ですが、最初の思いつきの多くは失敗に終わるでしょう。しかし、それで構わないのです。
かすり傷程度の失敗を繰り返しながら、10回のうち1回でもアイデアが当たれば、それはあなたのキャリアやビジネスにおいて計り知れないリターンをもたらします。これは会社の新規事業でも、個人での副業や独立でも、全く同じ原則が働きます。
2. インターネットの黎明期、私が「未来」を掴み損ねた理由
「行動しろなんて、そんなことは耳にタコができるほど聞いている」 そう思われる読者の方も多いでしょう。実際、若い頃の私も「分かったつもり」になっていました。しかし、50代になった今、過去を振り返って痛烈に反省している出来事があります。
まだインターネットが世の中に普及し始めたばかりの、1990年代半ばのことです。 当時の私は、自分が深く関わっていた実務の世界と、台頭し始めたITの仕組みを掛け合わせれば、「全く新しいビジネスモデルが作れる」という確信めいたアイデアを持っていました。周囲の仲間に話すと「それは面白い、やろう」と賛同も得られました。
アイデアもあり、実務の知識もあり、一緒にやる仲間もいた。 しかし結論から言うと、私はそれを実際に行動に移しませんでした。
なぜか。今の自分がある**「Comfortable Zone(安全で心地よい場所)」**から一歩を踏み出す勇気がなく、失敗して今の地位や安定を失うことを恐れ、ただチャンスを見送ってしまったのです。
その後、時代がどう動いたかは皆さんもご存知の通りです。 頭の中で「知っている・思いついている」ことと、実際に安全地帯の外へ出て、傷を負いながら「試行錯誤する」ことの間には、決して埋まることのない深くて暗い川が流れています。行動しなかったアイデアなど、何の価値もないのです。
3. 50代から「試行錯誤」を成功に変える2つの絶対条件
私自身の後悔も踏まえ、試行錯誤を単なる「失敗」で終わらせず、「成功へのプロセス」へと昇華させるために、絶対に欠かせない資質が2つあります。
① 圧倒的な「初速」(動きながら考える)
アイデアが頭に浮かんだ瞬間、脊髄反射で動くスピードです。40代、50代と経験を重ねるほど、人は「やらない理由」や「リスク」を論理的に考えるのが上手くなってしまいます。 しかし、考える時間は最小限でいい。準備が6割でも、まずは打席に立つ。**「動いてから、走りながら考える」**のが試行錯誤の本質です。
② 心の弾力性・レジリエンス(失敗をデータ化する)
何度失敗しても、心がポキッと折れないこと。「失敗した、自分には才能がない」と落ち込むのではなく、**「このやり方は上手くいかないという貴重なデータが取れた」**とドライに変換し、すぐ次の試行へ繋げる強さです。
結び|転ぶことを恐れず、もう一度歩み始めよう
不確定なこの世界で、「絶対に成功する」と保証された確実な道など一つもありません。だからこそ、私たちは動き続ける必要があります。
思いついたらすぐに行動し、転んでも立ち上がり、手数を増やす。 その泥臭いプロセスの先にしか、ビジネスを成功させるチャンスは待っていません。
あの日の後悔を二度と繰り返さないために。私も今、もう一度自分を奮い立たせ、安全地帯を抜け出してこの「試行錯誤」の道を歩み始めています。
あなたも今日、ほんの小さな一歩から、試行錯誤を始めてみませんか?
玄水
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