【外資系の正体⑩】TOEICの点数も流暢さも無意味。外資系で言う「英語ができる」の残酷な正体

外資系企業に関して、日本人が最も呪縛にとらわれ、かつ致命的に誤解している能力がある。

それが**「英語ができる」**という言葉だ。 多くの人は、こう信じて疑わない。

  • TOEICで900点以上取ること
  • ネイティブのように流暢なスピーキング
  • LとRを完璧に使い分ける美しい発音

しかし、外資系中小製造業の最前線で22年間、数々の修羅場をくぐり抜けてきた実務家として断言する。 外資系で評価される「英語ができる」は、これらの要素とほとんど関係がない。

むしろ、この幻想に固執する人間から順に、今の時代は淘汰されていく。

目次

1. 外資系で求められるのは「語学」ではなく「業務遂行能力」

結論から言おう。 外資系で必要なのは、英語力ではなく**「英語を使った業務遂行能力」**だ。

英語は目的ではない。ただの「道具(ツール)」である。 しかも、その道具は新品ピカピカである必要はなく、かなり不格好で錆びついていても全く構わない。

  • 文法が多少おかしい(三単現のsが抜ける程度は日常茶飯事)
  • 語彙が中学生レベルに限定されている
  • 発音がゴリゴリの日本語訛り(サムライイングリッシュ)

それでも、仕事が前に進めば「合格」なのだ。

2026年現在、DeepLやChatGPTなどのAI翻訳ツールは完璧な文法の英文を1秒で生成する。もはや「正しい英語を書ける・話せる」こと自体に、ビジネス上の希少価値は1ミリも存在しない。

2. たった一つの評価基準:「その英語で、相手が動けるか」

外資系での英語評価は、極端なまでにシンプルだ。

「あなたの発した英語で、相手は次の行動を取れるか?」 本当に、これだけである。

  • 本社の人間が判断できるか
  • 上司が決断できるか
  • 現場のスタッフに指示を出せるか

気利きのきいたジョークや、ランチでの流暢な雑談ができるかどうかなど、仕事の評価においてはノイズでしかない。

「英語が話せる人」と「使える人」の決定的差

私が22年間で見てきたのは、**「英語が流暢なのに全く評価されない人」と、「片言のブロークンイングリッシュなのに絶大な信頼を得ている人」**の残酷な差だ。

この差を分けるのは、語学力ではない。**「思考整理能力」**である。

使える人は、以下の徹底ができている。

  1. 要点を先に言う(結論ファースト)
  2. 背景を短く、箇条書きのようにまとめる
  3. 相手が選ぶべき「選択肢」を提示する

流暢な英語でダラダラと経緯を語る人間より、拙い単語の羅列でも「A案とB案、どちらにする?私はAを推奨する。理由はコストだ」と迫れる人間の方が、外資系では「仕事ができる(=英語ができる)」と認識される。

3. 中小外資で最も評価される「無骨な英語の型」

中小外資において、英語に「文学的な美しさ」は求められない。求められるのは、誤解を生まない強固な「型(フレームワーク)」だ。

・【報告の型】 結論(Conclusion) → 理由(Reason) → 影響(Impact)

・【提案の型】 問題(Problem) → 選択肢(Options) → 推奨(Recommendation)

・【確認の型】 Yes か No かを明確に要求する

この型に沿ってコミュニケーションが取れる人は、言語の壁を越えて重宝される。

実は「話す」より「書く(メール)」が8割

実務上、最も重要なのはスピーキングではなく「メール(テキストコミュニケーション)」だ。

  • 状況の正確な説明
  • Yes/Noの判断依頼
  • 数値に基づく進捗報告

この3つがテキストで明確にできれば、オンライン会議で多少言葉に詰まっても致命傷にはならない。 逆に、**「ペラペラ話せるが、論理的なメールが書けない人」は絶対に評価されない。**なぜなら、外資系において「記録(エビデンス)に残らない口約束」は、存在しないのと同じだからだ。

4. 「英語だけできる人」が真っ先に消える理由

ここで、非常に興味深い、しかし残酷な法則をお伝えする。 外資系において、**「英語が不得意でも長く生き残る人」がいる一方で、「英語はペラペラなのに数年で消える人」**が確実に存在する。

長く生き残る人の共通点は一つ。**「代替不可能な専門性」**を持っていることだ。

圧倒的な技術力、深い業界知識、強固な顧客ネットワーク。これらを持っている人間は、極論、英語ができなくても生き残れる。なぜなら、言葉の壁はAIや通訳(社内のバイリンガルスタッフ)が翻訳して埋めてくれるからだ。

英語は「武器」にはなるが、「盾」にはならない

逆に、最も危ういのが**「英語『だけ』ができる人」**だ。

彼らは初期こそ重宝されるが、やがて「本社との単なる連絡係・調整役」に固定される。そして業績が悪化した際、真っ先にリストラの対象になる。 理由は簡単だ。「専門性のない翻訳係」は、AIに置き換えるのが最も容易だからである。中小外資では、利益を生まない「役割が薄い人」から順番に消えていく。

結論:「英語ができる」とは、仕事を前に進める力である

外資系で言う「英語ができる」とは、TOEICのハイスコアでも、ネイティブのような発音でもない。

  • 相手を動かす
  • 判断を引き出す
  • 責任の所在を明確にする

この3点ができているかどうかが全てだ。

英語は才能ではない。マインドセットと、実務の「型」への慣れの問題である。 「自分は英語が完璧じゃないから…」と足踏みしている暇があるなら、不格好でもいいから、今すぐ相手に「YesかNoか」を迫るメールを1通送るべきだ。

それが、外資系という戦場で生き残るための第一歩である。


玄水


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